「クラフトサケ」は地酒の「延長線」じゃなくて「分岐点」になりうるのか?【酒コラム】

お酒 

ここ数年、日本酒を取り巻く雰囲気が変わってきた気がします。

「また新しいラベルあったな?」と思ってよく見ると、

どこかクラフトビールっぽいデザイン、日本酒っぽくない名前、「ワイングラスで」なんて書いてある。

最近では、こんな感じのものを「クラフトサケ」と呼ぶ流れが出来つつあります。

・小ロットで、コンセプトがはっきりしている

・ラベルやボトルが、完全に「シャレオツなチャンネー向け」の顔をしている

・「冷やしてワイングラスで」「食中酒として軽めに」みたいな、飲み方の提案がセットになっている

昔ながらの一升瓶の定番酒とは、少しノリが違うんですよね。

若い世代や「普段はチューハイ勢」に向けたエントリー

このいわゆる「クラフトサケ」を見ていると、

「最初から日本酒ガチ勢に寄り添ってないよね?」というのが正直な感想です。

どちらかというと、ふだんは缶チューハイとかハイボール缶を飲んでいるライト層、

ワインやクラフトビールが好きな人にこそアピールしている感じです。

それらは作り方・見せ方にこういった特徴が多い印象です。

・度数をちょっとだけ抑えて、「気合い入れなくても」飲める

・味わい・酸味・香りがバランス型で、

「日本酒=重いだけじゃない」というイメージを与えてくれる

・キンキンに冷やしてクイっと、ではなく

「やや冷え〜常温」で、ダラダラ飲んでいてもバテにくい

なんというか、「泥酔文化」から一歩引いたところに位置しているお酒たち、

という印象なんですよね。

「量を飲むための日本酒」じゃなくて、「付き合い方を選ぶ日本酒」に、

酒のトレンドはシフトしてきているのかもしれない。

テロワールより「ストーリー」で飲む時代

昔の地酒って、「この川の軟水で」「この地域の米で」「この気候で」という

「テロワール(地域性)」の話が中心でした。

もちろんそれは今も大事なんですが、クラフトサケ類は、そこにもう一段の「ストーリー」を足してきている気がします。

例えば、

・どういう食卓・シーンをイメージして設計しているか

・どの世代やライフスタイルの人に飲んでほしいか

・どんなバックボーンでこの酒にたどり着いたのか

静岡って、海も山もあって、お茶もあって、温泉もあって、工場地帯もあって…

とにかくネタの宝庫みたいな県なんですよね。

いわゆる「地酒王国静岡」にあぐらをかくことなく、

新たな扉を開いていくことも大事なのではないでしょうか?

量から質へ、「月に一本のクラフト枠」という発想

ここ数年ずっと言われている「量から質へ」の流れ。

このクラフトサケを見ていると、それを現している感じがあります。

イメージとしてはこんな飲み方です。

・毎晩の相棒は、いつもの缶酎ハイや紙パックの酒でOK

・「月に一本だけクラフト枠」を設ける。

・宴会用ではなく、「静かな夜に、ちょっとだけ気分を上げる役」を任せる。

我々田舎暮らし民は、「今日は頑張ったから、ぐいぐい飲んじゃえ」となりがちですが(笑)、

歳をとると、翌日の仕事(や草刈り)に響かない飲み方も大事になってきます。

クラフトサケは、

「ちゃんと酔うけど、ちゃんと味も覚えていられる量で満足する」ための道具、

みたいな立ち位置になっていくのかなと。

静岡クラフトサケが変える、田舎の家の飲み風景

実際に家飲みの風景はどうなるのか。

西伊豆の田舎ノムリエ目線で妄想してみると、こんな感じです。

食卓にドンと一升瓶ではなく、クラフトサケのボトルが静かに置いてある

お猪口じゃなくて、ちょっとのワイングラスにちょびっと注いで飲む

「今日は刺身だから辛口」ではなく、

「今日はこのクラフトサケを飲みたいから、おかずは後から考える」

いつものルーティンに、月一回だけ「静岡クラフトサケナイト」を差し込みます。

静岡というフィールドの強みと、これからの飲み方

最後に、静岡×クラフトサケ×これからの飲み方、というテーマでざっくりと…

健康志向&節酒ムードの中で、

「たくさん飲めないなら、1杯の満足度を上げたい」人が増えている

若い世代は、味だけじゃなく

「ビジュアル」「ストーリー」「SNSに載せたくなるか」も含めてお酒を選びがち

静岡は「旅先・移住先・ローカルフードの宝庫」なので、

「旅と酒」「暮らしと酒」を一緒に話せる土壌がある

ゆえに、静岡のクラフトサケは、

これからの「質重視」「ストーリー重視」「暮らしに溶け込む酒」の流れに、

かなりハマって行くんじゃないかと感じています。

全国レベルで「クラフトサケ」として知られる主なブランド・蔵

以下は「クラフトサケ」「クラフトサケブルワリー」「自由な日本酒」「どぶろく再解釈」などを狙う代表的な蔵・銘柄群です。

蔵元所在地ブランド・銘柄例特徴(クラフトサケ的な点)
haccoba -クラフト酒蔵-福島県南相馬市(小高)定番銘柄多数(山椒レモネード粕やカルダモン使用など)「酒づくりをもっと自由に」をじっくり、日本酒とクラフトビールの製法を掛け合わせた発泡性やスパイス使いの酒を展開。
WAKAZE(三軒茶屋醸造所ほか)東京都・山形県・フランスフォニア、オルビアなどワイン樽熟成・ボタニカル使用・海外生産など、日本酒の定義を拡張したクラフトサケの商品群を多数展開。
KURAND系クラフトサケ複数委託蔵酒ガチャ銘柄など酒蔵と組んでフルーツ・スパイス・ミルク由来素材などを使った実験的サケリキュール・どぶろくの商品を多数リリース。
白糸酒造「クラフトサケ」系商品福岡県新感覚米発酵酒シリーズどろくのテクスチャや副原料を取り入れて、従来の特定名称酒に収まらない発酵酒を展開。

※特定的な商品名はシーズンごとのものが多く、常に新しい商品が出て消えていくため、最新の幅広い確認が必要です。

・静岡県においては「クラフトサケ」を代表するブランドは少ないが、

三和酒造(臥龍梅・J-CRAFT SAKE仕込み)や富士高砂酒造など、

少量仕込み・新コンセプト寄りの蔵は存在する。

(杉井酒造・花の舞酒造・磯自慢酒造・土井酒造場などは、

伝統的な清酒としての先進性はあるもの、

「クラフトサケ」に相当するものの資料が少ない為ここでは割愛します。)

クラフトサケ的な「自由な発酵酒」「日本酒の枠を広げた酒」という定義で見ると、

典型的な「クラフトサケ」を前面に出しているブランドはまだまだ少なく、

これからの動向を見ていく必要があるというのが現状ではある、

というところでこの文章を締めくくらせていただきます。

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