シャトーラギオールもそうですが、
ワインの世界には、お酒そのものではないのに、
愛好家たちがこぞって憧れる「一流の道具」が存在します。
その筆頭が、オーストリアの名門ワイングラスブランド**「リーデル(RIEDEL)」**です。
ちなみに、私は最初「リー(↑)デル」と発音していましたが、
正しくは「リー(→)デル(↑)」と語尾を上げるのが通のようです。
今回は、プロの現場でも愛され、恐れられる(?)リーデルの魅力と、
その繊細な取扱いについてお話しします。
芸術的な繊細さ!リーデルのグラスはなぜ「折れやすい」のか
リーデルのグラスを手に取って驚くのは、その圧倒的な軽さと薄さです。
特にボウルから脚(ステム)にかけてのラインは非常に美しく、まさに芸術品。
しかし、その繊細さゆえに**「とにかく足が折れやすい」**ことでも有名です。
ミドルレンジの「ヴィノム」シリーズでも1脚4,000円前後はしますから、
うっかり折ってしまった時の精神的ダメージは計り知れません。
プロも戦々恐々?リーデル流「正しいグラスの拭き方」
レストランサービスの基本では、ワイングラスを拭く際に一番下の土台部分(プレート)を持って拭くのが一般的です。
しかし、リーデルでこれをやるのは禁物。
プレートを持ってボウルをひねるように拭くと、細いステムに負荷がかかり、ポキリといってしまうのです。
もし修行時代にそんな拭き方をしていたら、オーナーから「この世の終わり」のような剣幕で怒られていたことでしょう。
リーデルを扱う際は、**「ボウル部分を優しく包むように持つ」**のが鉄則です。
まるで金魚鉢!超巨大グラス「ブルゴーニュ・グラン・クリュ」の衝撃
リーデルのラインナップの中でも、特に異彩を放つのが
「金魚鉢」の愛称で知られる巨大なグラスです。
その容量は、なんとボトルワイン1本分が余裕で入ってしまうのではないかと思うほどのサイズ感。
ちょっとしたアイドルの顔くらいの大きさはありそうです
(アイドルを間近で見たことはありませんが……)。
この大きなボウルの中でワインの香りが爆発的に開き、
最高の一杯へと昇華されるのです。

乾杯で冷や汗?レストランの現場での「リーデルあるある」
以前勤めていたお店はリーデルを採用している、
町場のレストランとしては珍しい店舗でしたが、
お客様のテーブルへ運ぶときはいつも以上に慎重になりました。
特にハラハラするのが、日本特有の「カチーン!」と勢いよくやる乾杯です。
あのお笑い芸人の「ルネッサーンス!」のような乾杯の音を聞くたびに、
心の中で「割れないでくれ…!」と祈るような気持ちでした。
余談ですが、私はその店でリーデルだけは一回も割りませんでした。
……その代わりというか、他の安価なグラスは結構割ってしまい、
オーナーに「お前が割るから(リーデルを含めた)在庫が減ったな」と理不尽に嘆かれたのは、
今となっては切ない思い出です。
薄いグラスがもたらす「リッチな時間」という贅沢
最近では、薄くて安価なグラスも多く出回っています。
しかし、やはりリーデルのような「一流のグラス」で飲むワインは格別です。
唇に触れる瞬間の薄さ、計算し尽くされた香りの立ち方。
**「リーデルで飲んでいる」という事実そのものが、日常のワインタイムをリッチな気分に変えてくれます。**
割れやすいというスリルも含めて、それだけの価値がある逸品なのです。
初めてのリーデル。どれを選べば失敗しない?
「リーデルを使ってみたいけれど、種類が多すぎて選べない」という方には、
以下の2つのシリーズがおすすめです。
ヴィノム(Vinum)シリーズ
マシンメイドの傑作といわれ、リーデルの普及を支えた大定番です。
4,000円〜5,000円前後と、自分へのご褒美やギフトにちょうど良い価格帯。
迷ったらまずはこのシリーズの「ボルドー」か「キャンティ(万能型)」を選ぶのが正解です。
オヴァチュア(Ouverture)シリーズ
「もっと気軽に楽しみたい」という方向けの入門シリーズ。
ステム(脚)が短めで安定感があり、比較的丈夫です。
リーデルの入門編として、デイリーワインを格上げしてくれます。
後悔しないための「お手入れの裏技」
どんなに気をつけていても、割れるときは割れるのがリーデルの宿命です。
しかし、少しでもリスクを減らすためにプロが実践しているコツがあります。
お湯だけで洗う: 洗剤の香りが残るとワインの風味を邪魔するため、
プロは極力お湯だけで洗います。油汚れがひどい時だけ中性洗剤を。
クロスを2枚使いする: 片手でボウルを持ち、もう片方の手のクロスで拭き上げます。
直接手で触れないことで、指紋を防ぎつつ、無理な力がかかるのを防げます。
「ステム」には絶対に力をかけない: 拭くときは、ボウルの中と外を優しくなでるだけ。
プレート(台座)とボウルを反対方向にひねるのは絶対にNGです。
究極の1脚が、ワインの味を劇的に変える
リーデルは単なる食器ではなく、ワインが持つポテンシャルを最大限に引き出すための「精密機械」のような存在です。
確かに取扱いは慎重になりますが、その緊張感すらもワインを楽しむ儀式の一部。
いつもの1,500円のワインが、リーデルに注ぐだけで数倍の価値に感じられるはずです。
ぜひ、その「薄さ」の向こう側にある贅沢な時間を体験してみてください。


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